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光ネットワーク導入事例 エレベータシャフト 配線ソリューション
既設ビルの光配線の悩みを一挙に解決。 驚きのソリューションが登場しました。
 
昨年の10月7日、東京都中野区にある複合商業・文化施設、中野サンプラザで、光LAN配線に革命をもたらす実験が行われました。住友電工をはじめ、光ネットワーク関連メーカー十数社が協賛して行われた実証実験は、エレベータシャフトを縦系の管路に活用しようという大胆な試み。すでにある空間を利用することで、大規模な工事が不要となり、最少限の費用で光バックボーンの敷設ができるため、特に、既設ビルの光化に福音となることが期待されます。
なるほど、エレベータシャフトは、ほとんどがビルの屋上まで通っていて、縦系の管路にうってつけです。なのに、なぜこれまで活用されてこなかったのか……。コロンブスの卵のような発想から生まれたエレベータシャフト配線ですが、実現のためには建築基準法の改正が必要でした。
この法改正を国土交通省に働きかけ、中野サンプラザでの実験を主宰したのが(特活)光ファイバー普及推進協会。理事長の後藤正弘様に、エレベータシャフト配線を実現させたねらいや、協会の活動内容などについてお訊ねしました。
 
エレベータシャフトを使えば、 短期間で工事が完了します。
──エレベータシャフトを管路にするというのは、今まで誰も考えませんでしたが……。
後藤 ええ。建築基準法の第129条に、エレベータ以外のものに使ってはいけないと規定されていて、それが業界の常識になっていたわけです。
──その規制の壁を乗り越えた。
後藤 私を含めて、みんなシロートだからできたんですよ。光ファイバー普及推進協会は、元々は、この地域のビルの大家が集まった勉強会です。5年前、ブロードバンドの時代が来るというので、「これから、どうなるんだろう」って話をしていて、心配していても仕方がないので、キャリアさんやメーカーさんを招いて勉強をさせてもらうことにした。で、聞いてみると、誰も大家のことを考えていない。ならば、自分たちで何とかしようと、ずっと手弁当でやってきましたから、自由な発想ができた面がありますね。
──キャリアやメーカーが、ビルの大家さんのことを考えていないというのは、どういうことですか?
後藤 たとえば、あるテナントがAというキャリアの線を入れたとします。その後で、別なテナントがBというキャリアにしたいと言い出したら、Aが敷設した管路を使わせてもらえないから、また工事をしなければならない。工事のたびに建物躯体をいじめるわけで、これじゃ大家は怒りますよ。
──でも、ブロードバンド時代への対応も迫られている。
後藤 だから、工事が1回で済むためにも、自前の光ネットワークを持つ必要があるんです。しかし問題は、工事費用も大家の自前になる点です。そこで、エレベータシャフトに目をつけたんですね。で、調べたら、法律が立ちはだかっていることが分かった。これは国交省に陳情するしかないと……。
──確かに、エレベータシャフトは吹き抜けの空間ですから、防火区画を壊す工事もいりません。
後藤 それに、密閉された空間ですから、改めて配管を入れる必要もなく、光ケーブルを裸で敷設できる。しかも、エレベータの籠がリフトがわりになるから、作業も楽。これは、今回の実験で確かめることができました。テナントの営業を妨げないという条件下での実験でしたので、夜間しか作業できなかったのですが、地上21階、地下2階の工事が、たった2日で完了しましたから。
──工期が短いというのは、それだけ低コストでできるということですね。
後藤 そうですね。ただ、エレベータシャフトを使うための制約もあって、シャフトのなかでは分岐作業ができない。分岐盤(光PD)も設置できない。必然的に、スター型の配線になるんですね。スター型なら、シャフトの側壁に小さな穴をあけて、縦のケーブルをそのままフロアに横出しできます。分岐盤は、側壁の裏側に設置します。
────だから光ブランチケーブルを使った?
後藤 いや、もし階数が少ないビルなら、フロアごとのケーブルを1本1本引けばいいので、必ずしも光ブランチケーブルを選ぶ必要はありません。しかし、中野サンプラザのような高層ビルでは、その方法だと多数のケーブルを引かなければならなくて、現実的じゃない。光ブランチケーブルなら、幹線が1本にまとまるというメリットがあります。
────今回の実験では、ABFシステムのパイプも敷設しています。
後藤 ABFシステムも、分岐BOXをシャフトの外に設置できますから、適応するんですね。今回は、将来の拡張のために、空のパイプだけを敷設しました。
※光ブランチケーブルは、製造元であるトヨクニ電線(株)が提供しました。

大家さんのために、そして、 この国の情報化のために。
──しかし、国交省は、よく法改正に応じましたね。
後藤 国交省がいちばん重視したのは、大震災のときに使えるという点でした。エレベータシャフト配線を利用すれば、地震のときでもエレベータを制御できる。さらに、災害時の地域情報網としても活用できるという期待があったと聞いています。
──エレベータ制御用や防災用の心線も用意するということですか。
後藤 それだけではありません。情報通信用はもちろん、放送用、警備用、構内LAN用、デジタル家電用、水道光熱の検針用と、用途はさまざまです。エレベータシャフトは屋上まで行っているので、携帯電話の基地局や衛星放送のアンテナを立てるのにも使いやすい。でも、これらは応用であって、まずは十分な心数を入れて、しっかりとしたインフラを整備しておくことが大事です。
──この7月に刊行された『配管・配線設備ガイドブック』には、ビルの用途や規模別に必要心数が規定されています。
後藤 その必要心数をレベル別に分けたところがミソです。レベルというのはグレードの意味で、大家さんは、どのグレードの設備にするか選択できます。実は、これまで、こうした基準がなかったんですね。だから大家さんは、光LANを整備したくても、安心して取り組めなかった。逆に、基準があれば、たとえば「ウチのビルはレベル4ですから」と、利便性に応じたテナント料をいただくためにも説得力が増します。
──このほど、後藤さんは、アクセス高度化協議会という組織を立ち上げました。これは、ビル内光配線の標準化組織をめざしたものと聞いています。
後藤 ええ、基準を設けるだけでなく、それを守っていくために、認証組織も必要だと考えたからです。それと、情報通信設備の地位の向上も大切ですからね。
──地位の向上?
後藤 だって、ビルを建てるとき、給排水、空調、電気の設備設計は建築設計と同時に行いますが、情報通信の設計は、それらが全部終わってから、付け足しみたいにしてやっているでしょう。そうじゃなくて、情報通信もビル設備の重要な要素として、最初から設計に入れてほしい。だから『配管・配線設備ガイドブック』では、「高度情報通信設備」という概念を打ち立てて、これを浸透させようとしているんです。
──建築士にも分かってほしいということですね。
後藤 もちろん。そして、やはり大家さんに分かってほしい。おかげさまで、「高度情報通信設備」の概念は、国交省がすすめる建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)にも登録されました。「高度情報通信設備」が、これから大きな価値を生み出すものだということを、ぜひ知ってほしいんですね。
────なるほど。後藤さんは、大家さんのことをまず第一に考えているんですね。
後藤 自分が大家だからね。(笑) でも、この活動をずっとボランティアでやってきて、なんか、この国の情報化というものが、ちょっと危ういと感じている面もあるんです。だって、ユビキタス社会とか、新IP網とか、国策のスローガンがいろいろ打ち出されて、確かにキャリアは頑張って光ネットワークを充実させてきた。けれど、末端のビルのなかはどうなのか? 外は光のハイウエーが走っている、なのにビルのなかはデコボコ道、というような状況ですよ、いまは。これでいいはずがありません。先日、韓国から呼ばれて講演に行ってきましたが、韓国では、来年以降、新築のビル・マンションには強制的に光ネットワークを入れるんですよ。向こうは大統領命令でそれができますけど、日本では無理です。では、どうすれば対抗できるか? そのためには、ビルの大家さんに、デコボコ道をハイウエーに変えてもらうしかないと思うんですね。

エレベータシャフト内での、横系への通線作業。シャフト内の空間は意外に広い。 実証実験のネットワーク配線概念図
 
横系へ通線。光ブランチケーブルと、ABFシステムのパイプが一緒にシャフト外へ送り出されている。


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