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Case study
光ネットワーク導入事例 「山梨県情報ハイウェイ」
管理運営は、民間の共同事業体に一任。県民みんなの情報基盤だから、みんなで工夫してフルに活用してほしい。
全国各地で地域情報化イントラネットの整備が進むなか、ここ数年、県が主体となって、県全域を繋ぐバックボーンを構築する動きが活発化しています。「山梨県情報ハイウェイ」もそのひとつ。40〜236心の光ファイバを総延長約320kmにわたり敷設し、昨年8月に運用が始まりました。
県が整備する高速情報通信基盤としては全国で10例目。行政利用だけでなく、一部を民間に開放し、地域産業の活性化やデジタルデバイドの解消に役立てようというねらいは共通ですが、「山梨県情報ハイウェイ」には他県と異なる工夫があります。それは、民間開放する光ファイバの管理運営を民間の共同事業体にすべて委ねること。大胆な決断とも思えますが、プロジェクトを推進した山梨県企画部次長(情報政策課長)の笠井一様は、「行政のノウハウなんて、たかが知れてますから」と意に介しません。このような発想は、どこから生まれてくるのでしょう。
今回の導入事例は、まず笠井様に「山梨県情報ハイウェイ」構築の目的や経緯についてお尋ねしました。そして次に、共同事業体として設立された(株)デジタルアライアンスの代表取締役社長鈴木新一様に管理運営の実際をお聞きし、工事を担当したJV3社の方々に施工時のお話を伺いました。
山梨県庁

山梨県庁
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山梨県企画部次長(情報政策課長)
笠井 一 様
情報ハイウェイとCATVの組み合わせに期待しています。
──まず初めに、「山梨県情報ハイウェイ」を構築することになった経緯をお聞かせいただけますか。
笠井 平成9年に策定した「山梨県情報化構想」がベースにありまして、平成13年に政府が打ち出したe-Japan戦略を受けて平成14・15年と電子自治体の構築や地域情報化の一層の推進をめざす計画を立てました。それらを実現するにあたり、民間からのご意見・ご要望を参考とさせていただくなかで、平成16年に「やまなしITプラン」を策定し、「山梨県情報ハイウェイ」を整備することとなったのです。
──せっかく整備するのだから、民間も利用できるようにしてくれという要望ですか。
笠井 そうですね。税金を使うわけですからね。県商工労働部では企業誘致を一生懸命やっていますが、場所があっても、インフラがないところに企業はなかなか来てくれません。できるだけ安いコストで最新の情報通信環境が必要だと迫られたわけです。そこで、民間開放分として31%を用意することになった。それと、2011年問題も大きかったですね。
──地デジですか。
笠井 はい。山梨県には、山岳地帯に位置し電波の届かない地域が多い。現在でもテレビをCATVで見ている地域が約9割です。それが地デジに完全移行したらどうなるか。地デジへの備えは待ったなしなわけです。
──具体的に、情報通信網を整備することと、CATVの地デジ対応は、どう関係するのですか。
笠井 CATVとひと言でいっても、規模はまちまちです。県内大手のCATV事業者もあれば、アンテナを立てただけの小規模な共聴施設もある。大手はいいけど、中小では、地デジ化にあわせて設備を更新する体力がありません。そこで、地デジの電波を1か所で受信して、情報ハイウェイを通じて配信できれば、ものすごく助かるわけです。
──CATV網を活用すれば、インターネット接続も容易になります。
笠井 そうですね。デジタルデバイドの解消にも役立ちます。情報ハイウェイを管理運営するデジタルアライアンスはISP事業者の許可を受けているので、CATV事業者を通して加入者にインターネット接続サービスを提供することが可能です。ただ、今はまだ幹線ができた段階で、支線や引き込み部分が整備されるのはこれからです。
──市町村の地域イントラとの接続はどうですか。
笠井 それもこれから。合同庁舎などの県の出先機関には光ファイバが行っていますので、それと地域イントラを繋いで、行政サイドでの情報ハイウェイの有効活用を推進していかなければいけません。
──医療や福祉、教育、安全など、市町村と連携することはたくさんありますね。
笠井 そうですね。また、防災面では、以前から運用していた防災行政無線に加えて、情報ハイウェイにより防災情報を提供することが可能となります。そのとき、CATV網が活用できるのではないかと思います。県民のお宅のテレビまで、直接、河川情報とか火山情報を届けることができる。情報ハイウェイとつながったCATV網は、もちろん難視聴地域の対策の面もありますが、行政情報を流すことで、住民サービスを向上させるキーになると期待しているのです。
みんなの協力があって初めて完成したプロジェクトです。
──注目を集めている共同事業体ですが、民間に管理運営をまかせることになったのは、どのような理由からですか。
笠井 情報ハイウェイの管理運営方法はいくつかあって、従来は、自治体が自前でやる、電気通信事業者に委託する、第三セクターをつくって委託するなどが主でした。山梨県の場合はどういう方法がいいか、民間企業、各種団体、地方公共団体等で構成する地域情報推進協議会で検討してもらったのです。その結果、情報ハイウェイの管理運営を行う共同事業体を県内の民間企業が中心となって設立してはどうかという報告をいただき、県内の新聞社、放送局、CATV、電気通信事業者、システムインテグレーターなどが共同出資して(株)デジタルアライアンスを設立したわけです。
──民間に開放するのだから、運営も民間主導がいいということですか。
笠井 そうですね。行政は、営業とか経営とかはヘタですからね。(笑) 県民みんなの情報基盤だから、みんなで汗をかいたほうが知恵もでるし、コストも抑えられる。ただ、民間で活用する場合、通信品質の確保が要求されます。行政だけのネットワークなら、多少止まっても、県民にご迷惑をおかけしない範囲であれば、まあ許されるところがありますが、民間が利用するとなると止められない。もちろん障害ゼロというのは理想論ですが、それに近づけるためのひとつの手段として、今回は光ファイバケーブルの監視・管理システムを導入し、デジタルアライアンスに監視してもらっています。
──地図上で、光ファイバケーブルの障害状態を監視できるシステムですね。
笠井 加えて、工事台帳も統合して見られるようにしています。障害が発生したら、その箇所を素早く特定して、影響の及ぶ範囲を地図上で把握できます。そして、障害箇所はどの工事業者がどのメーカーの部材で施工したかがひと目で分かるようになっていますから、すぐ修理に駆けつけられるのです。
──今回はJVで、複数業者が施工していますから、工事台帳の管理が重要になるのですね。
笠井 それと、光ファイバケーブルの一部は、河川監視や道路監視のために敷設したものを利用させてもらっていますから、配線構成が複雑です。県土木部が敷設する際、民間開放分の心線をあわせて整備してもらったのです。
──えっ、情報ハイウェイは、今回すべて情報政策課で新しく敷設したものではないのですか。
笠井 違いますよ。コストダウンの観点からも、言葉は悪いですが、使えるものはすべて使っている。(笑) それに、情報政策課で新しく敷設した光ファイバケーブルも、県土木部の全面的な協力によりできています。そしてもちろん、工事を担当いただいたJVの施工業者の方々にも助けてもらっています。そこで、情報政策課が果たした役割は何だったのかと振り返ると、関係者間の調整。みんなの力を合わせれば、1+1が3にも4にもなる、そのことを、今回は勉強させられました。情報政策課の仕事は、みんなの思いを引き出し、集約し、最大限に実現することだったのかもしれませんね。

「山梨県情報ハイウェイ」の光ネットワーク配線 伝送路監視・管理システム〔光線路監視システム[RFTS]十光配線管理システム[FACTS]〕の画面
 
(株)デジタルアライアンスでの伝送路監視・管理システム運用。

デジタルアライアンス
 
ネットワークを共有するから、情報の共有が進むのです。
名は体を表すといいますが、デジタルアライアンスという社名が、まさに私たちを的確に表現しています。デジタルをキーワードに、連携して何かやりましょうということですね。
今までだと防災は防災だけ、学術は学術だけというように、個々にネットワークをつくっていたから、リソースもバラバラだったのですが、ネットワークを共有すると、お互いの情報を交換し、相互に利用できるようになる。それが地域情報化だし、地域が生き残っていくひとつの方法だと思うのです。
たとえばCATVでも、ただ電波をアンテナでとって再送信するだけでなく、そこに地域の情報、台風がきたら身近なところの河川情報を流したりとか、そういう草の根的な情報を交換することで、密度も質も、より高い情報が生まれてきます。
ただ、正直いうと、今は自治体にしても地域のメディアにしても、何をやればいいか模索の段階です。しかし、これから医療分野などで通信を使った情報の共有化が進んでくると、自治体と国の出先機関とか、市町村と県の出先機関とか、すべてネットワークを組まなければなりません。そのとき何が始まるか、ちょうど面白い時代にさしかかっていて、私たちネットワーク技術者の出番だという期待をもっています。
ネットワーク技術者は、実は通訳者なんですよ。繋ぐことが私たちの仕事ですから、行政とか、メディアとか、現場の教育者とか、福祉の方とか、異なる文化をもった方々のお話をお聞きして、それぞれの思いを通わせていく。単なるITのエンジニアではないんですね。
デジタルアライアンスは、そういう通訳者の集団なので、何かあると、まっ先にここに相談の電話が入ります。すると、いろいろな人との信頼関係が深まっていく。今、若い技術者が集まってきていますが、人対人のやりとりを重ねていくなかで、本当のネットワーク技術者が育っていきます。人材育成の環境ができたことも、情報ハイウェイのメリットのひとつかもしれませんね。
(株)デジタルアライアンス 代表取締役社長 鈴木新一 様

デジタルアライアンスが監視している伝送路監視・管理システム
 

敷設工事JV
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「山梨県情報ハイウェイ」は、3つのJV、計6社により施工されました。
全体が3つの工区に分かれていて、
●第1工区……(株)協和エクシオとタツミエンジニアリング(株)
●第2工区……(株)エヌディエスと(株)ふじでん
●第3工区……(株)関電工と(株)サンテレコム
という組み合わせです。
ここでは、3つの工区で主管をされた3社の方々にお話をうかがいました。
工区ごと、それぞれに特徴とそれぞれに苦労があります。
──各工区の特徴と、施工上ご苦労されたことをお聞かせいただけますか。まず、第1工区から。
小山 私どもの工区は、国道20号線に敷設する工事が主でした。車道の下の管路に通すので、工事中は交通規制をしなければなりません。20号は山梨県随一の幹線ですので、交通渋滞をなるべく起こさないように気を使いました。当然、夜間しか工事できず、真冬ですから、寒かったというのが苦労ですかね。(笑)
大石 第2工区は、甲府市の市街地が中心です。街なかの工事は、住民の方々への配慮にたいへん気を使います。それと、敷設環境がさまざまで、そのつどケースバイケースで工夫しながら作業しなければなりません。なかでも、いちばん苦労したのは、JRの線路の上にかかっている舞鶴陸橋を通した部分ですね。橋の側壁に敷設するのですが、通常行うように橋の上から足場を組んで作業すると、JRの高圧電線との距離が70センチしかなく危険でした。それで、結局、JRさんが軌陸車という特種車両を貸してくださることになって、線路上から伸び上がるようにして作業しました。線路に立ち入るので、終電と始発の間の2時間半しか時間がなく、1週間かけて、少しずつ延ばしていったのです。
小林 第3工区の場合は、長野県との県境から静岡県方面と、身延町地内や河口湖周辺など、施工区間があちこちです。接続の対象も多様で、すでに敷設されている道路監視や河川監視、火山監視などの光ファイバケーブルと、いろいろな場所で繋ぎました。設置してあるクロージャを開けて、そこで止まっているファイバはいいけど、延びているファイバはいったん切断して新しいファイバに繋ぎこむ。既設のファイバと繋ぐわけですから、現状の配線がどうなっているか、事前に県のほうから情報をもらって確認しながら作業をするのですが、気を使いましたね。
────第2工区では、総合試験も担当されたとうかがいましたが。
乙黒 施工後の損失測定は、もちろん各工区で行っているわけですが、最終的に、工区を越えて、すべての心線がちゃんと通っているか、その試験を私どもでやらせていただきました。情報ハイウェイは単純なスター型の配線にはなっていないので、この心線はどこを通って、どこからどこに繋がっているか、配線設計を細かく把握してテストしなければならないので、たいへんでしたね。
(株)協和エクシオ 西東京支店 甲信支店 アクセスエンジニアリング部 小山 進 様 (株)関電工 山梨支店 電力設備部 情報通信チームリーダー 小林 茂樹 様
(株)エヌディエス 営業部部長 乙黒 吉昭 様 (株)エヌディエス 情報通信部部次長 大石 哲弘 様

統一性のある工事をしようと、3社で何度も話し合いました。
──さて、今回の工事では、かなりの部分に住友電工のテープ心線EZbranchを収納したケーブルを採用いただきました。その経緯をお聞かせください。
乙黒 まず、県の仕様書に、この部分のケーブルには敷設後の拡張性や補修性が必要といった要求があって、それなら単心分離できるテープ心線がいいとなったのです。
大石 たとえば3心をすでに使っていて1心空いているという場合に、普通の4心テープだと、4心まとめてズバッと切断して、1心を取り出し、3心を繋ぎ直す作業をします。現用回線を切断するわけですから、送信を止めなければなりません。単心分離できるテープ心線なら、現用心線はそのままで、空いている1心だけ取り出して単心線と繋ぐことができます。
──しかし、単心分離できるテープ心線は、各メーカーで発売していますが。
大石 住友電工さんが単心分離の実演をしてくれて、それが決め手でしたね。EZbranchの場合、最多でも5回くらいこすると、パラパラっとばらける。心線に傷がつかないし、カスも残らない。作業性がいいのと、あと、工具の値段が安いのも魅力でした。(笑)
──みなさん、同じような経緯ですか。
小林 JVの情報交換の場で、「配線設計を見ると、敷設後に単心の取り出しが必ず出てくると思うけど、テープ心線、どうする」という話をしていて、エヌディエスさんがEZbranchに決めたということを知り、私どもも住友電工さんを呼んで実演してもらい、決めました。
小山  ウチも同じですね。単心分離に特別なスキルを必要としないので、誰でも同じレベルで作業できる点が大きかったですね。
──第2工区内には、監視・管理システムがあります。これについても住友電工の製品を選んでいただきました。
乙黒 これも、県の仕様書のなかに保守管理のためのシステムを導入する要求がありました。それで、数社に来てもらって説明を受けたのですが、住友電工の製品がいちばん操作性がよかった。それと、こちらの質問に、「今はまだできませんが、納期までに完成させます」とはっきりと答えてくれて、信頼感がありました。
──山梨県向けの特注の仕様があったのですか。
大石 特注というより、もともと住友電工さん側にその計画があって、完成を急いでもらったというほうが正しいですね。障害監視のシステムと、配線管理のシステムを統合して、ひとつの地図上で見られるようにしたいという要求ですが、約束どおり完成させてくれました。
────ところで、さきほどJVの情報交換というお話がありました。みなさんで会合をもたれていたのですか。
乙黒 ひとつのネットワークを分担して敷設するわけですから、統一性をもった工事をしようと、3社で何度も集まって話し合いました。
大石 使用する部材をどうしようかとか、東京電力から聞いてきた情報を共有したりとか、県庁に質問する前に分かることは教え合ったりとか……。
小林 それに、3社とも特長があって、エヌディエスさんはCATVに強いとか、協和エクシオさんは事業用通信に強く、関電工は電力通信系と、それぞれ得意分野があるので、お互いのノウハウを分かち合った部分もあります。
小山 その点、エヌディエスさんがJVをリードしてくれたおかげで、足並み揃えて、助け合いながら、今回のような大きな工事が完成できたのだと思います。
小林 短い工期のなかで、「終わらないんじゃないか」と不安なときに、ひとつの目標に向かってみんなが頑張っている姿を見て、自分も頑張れたというのもありますね。
大石 今回のJVの仲間は、どこか、戦友という感じがしますよね。



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